最後の一つ

 

ある男がラビのところに来て、罪の告白を始めた。

盗み、姦通、男色、強姦、殺人、詐欺、怠惰・・・告白は延々と続いた。

彼は聖書に載っているあらゆる罪を犯していたのだ。

「私はあらゆる罪を犯しました。私ほど多くの罪を犯した人間もいないでしょう。

 世界中を探しても、聖書に載っている全ての罪を犯した人間はきっと私だけです」

男は告白が終わると、後悔したような顔こそしていたが、

その話し方には得意気なところがあった。

それを見てとったラビは言った。

「確かに、あなたは聖書に載っているほとんどの罪を犯しました。

 しかし、あと一つだけ足りない」

「足りない?」

男は不服そうな声を出した。

「そう、あなたはまだ自殺していない」

 
 

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