臭いのないガス

 

ある日、病院に若く美しい女がやってきた。

その女は、シュワルツ博士に言った。

「先生、私はお腹がどうかしているようなんですよ。

 よくガスが出るのですが、そのガスにまったく臭いがないんです」

「じゃ、どんな具合か、ちょっとやってみて下さい」

「まあ、先生。まさかそんなに、したい時に出るもんではないでしょう」

そう言われてみると、確かにそうである。

「では、この次に出そうになったら、すぐに病院に飛んできて下さい」

シュワルツがそう言うと、女はうなずいて帰っていった。

4、5日経って、シュワルツはその女のことなどすっかり忘れていた。

いつも通り患者を診ていると、看護婦が飛んできて、先日の女の名前を言い、

急患だからすぐに診なければならないことを伝えた。

「先生、すぐに、すぐにです!」

彼は女の名前を思い出せなかったが、看護婦から、よくガスが出るが、

まったく臭いのない人だ、と聞くや飛び出した。

「出る、出るのです!」

女は叫んだ。

シュワルツと女が厳粛な顔をして待つうちに、小さな音がした。

シュワルツは鼻をピクピクさせ、女に言った。

「おっしゃる通りです。これはすぐに手術しなければなりません」

「えっ、手術ですって?」

女は腹を押さえ、青ざめながら言った。

「そう、手術です。あなたの鼻をすぐに手術しなければなりません」

 
 

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