ユダヤの祭日

 

ヒトラーが星占い師の判断を借りて、

政治や作戦の決定を動かしたことは有名である。

ある日、ヒトラーが星占い師に尋ねた。

「私はいつ死ぬだろうか?」

「総裁、あなたはユダヤ人の祭りの日に死ぬことになります」

と星占い師は答えた。ヒトラーはすぐに大きな机の上に乗っているベルを押した。

親衛隊の将校服を着た秘書が転げ込んで来て、踵を合わせた。

「ハイル・ヒトラー」

と叫んで、右手を上げた。

「すぐにユダヤの祭日の表を持って来い」

と、ヒトラーは叫んだ。

親衛隊の将校は足が床に水平になるように交互に上げて歩きながら、

執務室を出て行った。暫くすると表を持って来た。

「我が総統よ、これがユダヤの祭日です」

ヒトラーは眼鏡をかけて暫く眺めてから、ホッと息をついた。

祭日はこんなに少ないのか。

「この日には護衛を百倍にしろ」

彼は安堵した。

「総統」

と、星占い師はたしなめた。

「ご安心なさってはいけません。

 いつお亡くなりになっても、その日がユダヤの祭日になります」

 
 

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