妙案の落とし穴

 

村の学校の先生が、鼻たらしどもにユダヤの教養の初歩を教え込もうとしたが、

馬鹿者ばかりで一向にらちがあかない。

とにかく最低、安息日に唱えるヘブライ語の言葉だけでも仕込まねばならない。

そこで先生は一計を案じた。

「いいかね、ドビドル。安息日に唱える5つの言葉を覚える時に、

 それぞれお前の家のそばに住んでいる人達の名前だと思ったら覚えやすいだろう。

 例えば、“ヨム”、これはあそこの農家のマトウェイのこと。

 “ハシシ”、これはイワンのこと。“ワエフル”、これがマクシムのことだ。

 それから“ハシャマイエム”というのがピョートル、

 それに“ベハアーレズ”はラビのことだと思えばよい」

ドビドルはこれは妙案だと思って、一生懸命に暗記した。

次の朝、先生の前でスラスラと言い始めた。

「ヨムワエフル・・・」

先生が口を尖らせて言った。

「こら、ハシシを抜かしたじゃないか」

「先生、ハシシはゆうべ、卒中で死にました」

 
 

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