見事な復讐

 

ヘルムの町の住人が、隣町にやって来た芝居を観に行った。

そして、町に帰って来て、友人に出会った。

「おい、芝居はどうだった?」

「いや、ひどいものだったよ」

「どんな芝居だった?」

「いや、芝居は観なかったんだ。売り子がね、

 『お前は汚いユダ公か?』と聞いたんだ」

「それはひどいことを言いやがる」

「だから、見事に復讐してやった。チケットを買って、中へ入らなかったのだ」

 
 

精一杯の威厳

 

新しく連隊長になったアブラハムは、

部下の前では威厳を示さなければならないと思っていた。

ある日の午後、連隊長室でマンガの本を読んでいると、ノックの音がした。

彼は慌ててマンガの本を引き出しの中にしまったが、

机の上にまだマンガの本が積んであるのに気がついて、

慌ててそれも引き出しの中にしまった。

それから受話器を取り、耳にあててから大きな声で、

「よし、入れ!」

と怒鳴った。

入って来たのは新兵のダビデである。ダビデは道具箱を下げていた。

「今、軍司令官と電話で重要な話をしているところだ。ところで何の用だね?」

アブラハムは精一杯の威厳を示して、ダビデに聞いた。

「はい、連隊長。

 私は副官から連隊長室の電話が壊れていると言われたので、直しに来ました」

 
 

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