平家は「へいけ」ではなく「ひらや」と読むのが正しい。ある大金持ちが、所有する土地の広さにものをいわせて、建て坪が500坪もある豪華な平家を建築した。周囲の狭い2階建ての住人達は、その豪邸を御殿と呼んで羨ましがり、同時に妬みもした。そして金持ちも近所の反応に大いに満足し、まわりに比較に足る家が一件も無いことをよいことに、ひとり驕りたかぶっていた。しかし時代は変わり、さすがの御殿もまわりに高層マンションが立ち並ぶと、まるで四方を山に囲まれた盆地のような格好になり、全然日が当たらなくなってしまった。その上、そのマンション郡に邪魔され、せっかくの御殿も周囲からまったく見えなくなる始末。隣近所からは、今どき平家は駄目だと馬鹿にされるは、マンションの住人達からは四六時中見下ろされるはで、その状況に我慢できなくなった金持ちは平家を取り壊し、そこにマンションを建てる計画を始めた。しかし地球温暖化やダイオキシンの発生、欠陥住宅やオウム転入問題、挙げ句の果てには遺伝子医療抑制論や自自公連立反対まで、時代の流れに乗ってはいるものの、実は何の関係もない理由を盾に、町内に猛烈な反対運動が起こる。町民達による連日連夜の監視体制、プラカードを掲げてのデモ行進とシュプレヒ・コールに、あえなく計画は中止。一生その平家で我慢する羽目になってしまった。転じて、今の時代、どんな豪華な平家もやっぱりマンションにはかなわないというたとえ。建てるなら狭くても2階建て以上がよいという教え。
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