盗人にも三分の理
            
通 説

 盗人が他人のものを盗むのにも、それなりの理由がある。どんなことにも、こじつければ理屈はつけられるというたとえ。「盗人に五分の理」「盗人にも一理屈」「泥棒にも三分の道理」などともいう。

  
   
珍解釈

 三分は「さんぶ」ではなく「さんぷん」と読む。夜中、泥棒がある家に盗みに入った。宝石や現金など目ぼしい物はあらかたいただき、そろそろ失礼しようとした時、ふとテーブルの上を見ると、そこにはカップラーメンが置いてあった。しかもその横には御丁寧に、お湯の入ったポットが保温状態のままコンセントも抜かずに放ってあるではないか。深夜ということもあり、急に腹の虫が騒ぎ出した泥棒は、早速カップラーメンにお湯を注ぎ、出来上がるのをじっと待っていた。しかし運悪く、三分待つ間に、たまたま家の者がトイレに起きて来たため、カップラーメンを前にニヤけているところを見つかってしまった。さらに運悪く、叫び声を聞いて台所に駆け付けたその家の住人達は、全員現役のプロレスラー。泥棒は庭に引きずり出され、無制限一本勝負の開始。挨拶代わりの延髄蹴りに続き、ブレーンバスター、バックドロップ、ウエスタン・ラリアット、ダブルアーム・スープレックス、パイルドライバーといった往年の必殺スペシャルメニューを十二分に堪能し、最後はスコーピオン・デストロックで意識不明。試合時間42秒。勝利の雄叫びが響き渡る中、泥棒は昏睡状態のまま病院へ運ばれた。転じて、カップラーメンはお湯を注いだら、必ず三分待たなければならない。それは暇人でも泥棒でも同じであり、急いでいる時には決してカップラーメンを食おうなどと思ってはいけないということ。

  
   
教訓

 夜中のラーメン。この泥棒さんの気持ち、よぉーわかります。むしろ悪いんはこの家の住人達です。一晩中カップラーメンとお湯をセットで置いとくやなんて、こりゃまるでネズミ捕りやおまへんか。おまけに、品物盗んでる最中に見つかったんやったら諦めもつきますけど、もう出来上がるラーメン前にしてフタも開けずに御用やて、そりゃあんまりでっせ。せめて汁ぐらい吸わしたりーな。それから、パイルドライバーはいけまへん。下は地べたでっせ。死んでしまいまんがな。とにかく、ラーメンは人目のつかん所に置いとかなあきまへんで。夜中に食えんかった悔しさは、一生トラウマとして残ります。生きてたらの話やけど。

 
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