Volume24
 
 

 年をとるにつれて、いろいろなことがわかってくると言う。
 恐らく、若い頃には気にもしなかったような
 ちょっとしたつまらないことが、だんだん気になり出すのだろう。
 手放しで喜べるほど素晴らしいことだとは思わないが・・・

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 心にゆとりがなければ、どんなに努力しようと
 それは大した結果には結びつかないだろう。
 ほんの一握りのゆとりが
 感性を豊かにし、視野を広げるのである。

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 昨日ここで歌った歌を、今日ここで同じように歌うことができない。
 ここにはすべての音符が昨日とまったく同じように並んではいるけれども。
 昨日ここで描いた絵を、今日ここで同じように描くことができない。
 ここにはすべての風景が昨日とまったく同じように待ってくれてはいるけれども。
 昨日ここで話した人と、今日ここで同じように話すことができない。
 それがたとえ昨日話したことと同じであったとしても。
 
 ただ昨日が今日に変わっただけなのに
 僕にはすべてのものが、がらりと変わったように思える。
 僕はただ昨日の楽しさを、もう一度求めているだけなのに
 すべてのものが、昨日の楽しさを忘れたように振る舞う。
 昨日は楽しさを、あんなに簡単に手に入れることができたのに
 すべてのものが、昨日の楽しさを拒んでいるように振る舞う。
 
 僕が変わったのだろうか。
 いや、昨日を覚えている僕が変わっているはずはない。
 そう、昨日を求める僕が変わっているはずはない。
 いったい何が変わったのだろう。
 歌か、風景か、人か、僕か。
 いや、何も変わってはいない。
 すべてのものが昨日と同じ。
 歌も風景も人も僕も昨日と何も変わってはいない。
 でも歌も風景も人も僕も
 もはや昨日のものではなくなってしまった。
 僕が求める昨日のものではなくなってしまった。
 今日の中には昨日の楽しさのかけらさえも生きてはいない。
 今日の楽しさは今日新たに作り出していくしかないのだろう。
 ああ、昨日の楽しさよ...昨日でさようなら。

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 個性だ、個性だ、と騒ぎ立てる時代に限って
 個性的な人間が少ない。
 戦争だ、戦争だ、と騒ぎ立てる時代に限って
 戦争は少ない。
 希望だ、思いやりだ、と騒ぎ立てる時代に限って
 人々の顔に表情が少ない。

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 殴ってやればわかるって、そういう奴は。
 初めから言葉なんて感じない脳味噌なんだ。
 そうやって生きてきたのさ、そいつは。
 だから殴ってやればいいんだ。
 決して悪いことじゃない、そういう奴に対する時には。
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