Volume60
 
 

 助言、忠告、懇願、そして非難
 これらはみなすべて姿を変えた命令である

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 子供を叱らない親というのは
 自分にやましいところがあって叱れないだけなのだ

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 恥を気にしたり、臆病になったり、何かに恐怖を感じている人間は
 ひょっとしたら自分の命は永遠だとでも思っているのだろうか。

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 謙遜とは上品な虚栄心である

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 パフォーマンスなんて人が大勢いるより
 たった一人の目の前でやる方が緊張するんだ
 人が多ければ多いほど、それは誰もいない状況に近づいていくんだ
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 男 「ちょっと絵を拝見・・・ほう、ピカソ張りの絵ですね」
 老人「なんですか、あんたは。ワシの絵を馬鹿にしておるのか」
 男 「いや、そんなつもりじゃ・・・ただ、その構図といい、強烈な線のニュアンスとい
    い、往年のピカソに通ずる斬新さがあるなと・・・」
 老人「何を言っとるか。どうせそんな調子の良いことを言って、道楽で描いている素人の
    下手くそな絵を、暗にからかって楽しんでいるだけだろうが」
 男 「いや、私は真剣にその絵が・・・」
 老人「つまらない言い訳はそれくらいにしなされ。誰がすき好んでこんな下手な絵を描き
    たいと思うものか。ワシだってもっと上手に、出来ればミレーの落ち穂拾いのよう
    な素晴らしい絵を描いてみたいわい。しかし、しょせん道楽は道楽、そんな芸術作
    品とは似ても似つかぬ駄作じゃということぐらい自分でもわかっとるわ。それをよ
    りによってピカソじゃと、ワシの絵を子供の落書きじゃと言うのか! そこまで素
    人を馬鹿にして何が楽しいんじゃ!」
 男 「ピカソが子供の落書き・・・」
 老人「そうじゃ。ゲルニカだかゲロゲロだか知らぬが、うちの孫の方がもっとマシな絵を
    描きよるわい。構図じゃ線じゃと訳のわからん理屈を付けて、巷では法外な値段で
    売られてるらしいが、あんな醜悪な絵のどこが芸術なんじゃ。見る人に美しい感動
    を与えるものこそが芸術じゃ。訳のわからん醜いものであってはならんのじゃ」
 男 「しかし、世界が認めているわけで・・・」
 老人「誰が認めたんじゃ。アフリカの原住民が認めたか?イギリスのパン屋が認めたか?
    ドイツの自動車工が認めたか?インドの酒屋が認めたか?少なくともワシは認めと
    らんぞ! 一部のゲテモノ食いが血迷うたに過ぎぬのじゃ」
 男 「ゲテモノ食い・・・血迷った・・・」
 老人「そうじゃ。芸術とは落ち穂拾いじゃ、モナリザじゃ、ダビデの像じゃ、踊り子じゃ、
    自由の女神じゃ、展覧会の絵じゃ!」
 男 「展覧会の絵はチャイコフスキーの曲では・・・」
 老人「チャイコ・・・ええい、そんなことはどうでも良いのじゃ」
 男 「そんな無茶苦茶な・・・」
 老人「無茶苦茶はピカソじゃ。一部のゲテモノ食いにしか解らぬ絵など、ただの無茶苦茶
    な落書きじゃ。斬新じゃというなら、その斬新さまでも多くの人の目に美しいと映
    らなければならんのじゃ。ゲテモノ食いは絵の持つ素朴な美しさに飽きただけなの
    じゃ。単に彼等は斬新さという変わった味を求めているに過ぎないんじゃ」
 男 「ミレーは素朴な美しさだけで良いと・・・」
 老人「そうじゃ。春はタケノコ、夏はキュウリ、秋はさんま、冬は白菜じゃ。たとえそれ
    らにソースやケチャップをかけて食う時代が来ても、ワシは絶対に嫌じゃ。素朴な
    味はそれだけで絶品なんじゃ。ソースやケチャップにそれを越えることは出来ない
    んじゃ!」
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